みなさんは周期表と聞くと何を思い浮かべますか。学生のとき、授業で表を覚えるのに苦労した、という方も多いのではないでしょうか。
今年2019(平成31)年は周期表が誕生してから150年にあたり、それを記念した「国際周期表年」です。1869(明治2)年にロシアのメンデレーエフという化学者が、元素を原子番号(原子核の陽子の数)順に並べると周期的に性質の似たものが出てくるという規則性に気づき、その法則を一覧表にまとめたことにより周期表が誕生しました。
メンデレーエフの考えた周期表の画期的なところは、表の中で該当する元素が当時存在しないとされていた部分を無理に埋めようとせず空欄にしておき、逆にその性質にあたる元素があるに違いないと予測した点です。実際、その後空欄部にあたる元素が発見されていき、そのうちの1つは日本人の研究グループが発見したことから、2016(平成28)年に「ニホニウム」と命名されています。
我々人間を含む地球上のすべての物質は星が生まれる過程でできた元素の組合わせだけでできていることから、元素の性質を示す周期表は物質の設計図とも言え、この世界の生成の秘密につながるものでもあります。世界各国で記念行事が行われるこの「国際周期表年」に、あらためて周期表や分子・原子の世界の魅力に触れてみませんか。
分子・原子の世界 ‐国際周期表年2019‐
最終更新日 2019年04月29日
周期表に関する本
誠文堂新光社 2017年
理化学研究所が発見したニホニウムが元素周期表に加わることになりました。そもそも、周期表にはどんな意味があるのでしょう。それぞれの元素は一体何が違うのでしょう。元素はどんな方法で発見されるのでしょう。元素と周期表について、最新情報も踏まえながら分かりやすく解説したガイドブックです。
トム・ジャクソン/著 化学同人 2018年
周期表を性質の似通った縦列の「族」を中心にカラフルに色分けして解説しています。各元素について「どのような姿か」「何に使われているか」をコンパクトかつ豊富に写真を用いてまとめていてページごとに新たな発見があり、きっと次々と読み進めたくなることでしょう。
ポール・ストラザーン/著 バベル・プレス 2006年
かつて、科学や化学は哲学の一部でした。哲学者たちが「万物の元」となる元素について考えを巡らせていた時代からはじまり、理論の発達と実験の繰り返しを経て進歩してきたのです。元素が定義され、発見され、各元素の性質や規則性がわかってきて、ついに周期表の枠組みが見出されるまでの歴史を、宗教・政治・時代背景と化学との関係に触れながらたどります。
元素を紹介する本
桜井弘/著 講談社 2017年
118の元素について、1元素ずつ項目を立てて解説しています。原子配置や融点・沸点などの化学的データから、それぞれの元素の背景、ゆかりの人物、そしてその元素が生活の中でどのように役立っているかまで、読み物としても充実した内容になっています。
桜井弘/編著 化学同人 2011年
上記の本と同じ著者の手による、挑戦意欲をそそる「検定」の形で楽しく元素を学べる本です。中学生レベルのLevel1から専門家・元素マニアレベルのLevel5まで4択問題がそろっています。元素に詳しくなるのにこういう間口から入るのも面白いでしょう。2018(平成30)年には第2巻も刊行されています。
サム・キーン/著 早川書房 2015年
周期表は、科学の成果であると同時に人間の営みの結果でもあります。つまり、元素と人間とのやりとりの歴史をまとめた、人類史のひとつのかたちなのです。元素にはそれぞれに強烈な個性があり、人々の生活や政治、通貨や犯罪などにも関わってきました。それらのエピソードからは、賢明であったり醜くかったりする、多様な人間の在り様が窺えます。
石原顕光/著 日刊工業新聞社 2017年
ひとつの項目について、右ページに解説、左ページに図解と見開きでわかりやすく説明されており、タイトルにあるとおり「元素」の入門におすすめの本です。
齋藤勝裕/著 日本実業出版社 2016年
地球上に存在する元素は約90種あり、そのうち約70種が金属です。レアメタルやレアアースと呼ばれる希少金属は、これらのうちの47種のことをいいます。ニュース等で話題になり近年注目を集めていますが、どんな金属で、どんなことに使われるのか知っていますか。実は、私たちの身のまわりにあるIT製品や家電製品にも希少金属が含まれており、案外身近なところにあるのです。
佐藤健太郎/著 新潮社 2013年
小学校の理科にも登場する炭素ですが、物を燃やしてできる炭や鉛筆の芯など、どこか地味な印象をもっていませんか。炭素は、木材やプラスチック、食品や医薬品、石油などのエネルギー源にも欠かせない元素です。さらには、あらゆる生命も文明社会も、地上に存在するわずかな炭素をかき集めてようやく成立してきたと聞いたらイメージが変わるでしょうか。人類史を動かす原動力のひとつとなった炭素と、炭素を基本とした化合物「有機化合物」にスポットを当てます。
見てわかる・見て楽しむ本
桜井弘/著 化学同人 2018年
宮沢賢治は数々の童話や詩を書いたことで有名ですが、一方で化学を愛し、鉱物などにも造詣の深い人でした。『銀河鉄道の夜』で車中から見えるある景色が「ルビーよりも赤くすきとおりリチウムよりもうつくしく酔ったようになってその火は燃えているのでした」と表されたように様々な鉱物が作中に顔を出し、作品に独特の魅力を与えています。この本は賢治作品と鉱物のかかわりを、豊富な写真を用いて解説しています。
セオドア・グレイ/著 創元社 2018年
『世界で一番美しい元素図鑑』、『世界で一番美しい分子図鑑』と続く3部作の最後の1冊で、分子の相互作用である化学反応をテーマに据えた本です。たとえばコンサートなどで使用する「光る棒」サイリウムは、内部の液体の化学反応によって光ります。そのように、身近ですが、まるで魔術のような化学反応を連続写真や反応中の分子図などで解明していて、化学への興味をかきたてるユニークで貴重な1冊となっています。
日東書院 2017年
金・銀・銅・鉄などの金属やダイヤモンド(炭素)などは、単一の元素からなる鉱物です。それ以外の鉱物は大半が2種類以上の元素からできた化合物であり、それらは色・形・科学的性質が驚くほど様々で、なかでも宝石と呼ばれる一群は我々の心を惹きつけてやみません。原子の配列が少し違うだけでこれほど形状の違う結晶になるという、物質の成り立ちの不思議を感じます。美麗なビジュアルで、眺めて楽しめる本です。
多様な視点から分子・原子を考えた本
ベンジャミン・マクファーランド/著 化学同人 2017年
あらゆる物質を構成する元素は、さかのぼっていくと星屑の成分にたどりつきます。一見でたらめにも見える生命の進化と発展も化学の原理に従っており、元素や化学変化に着目すればすっきり説明できるのです。周期表をガイドに生命史を読み解いていくと、生物や地質といった各分野との関わりの深さが見えてきて、化学に対する印象も変わるかもしれません。
齋藤勝裕/著 シーアンドアール研究所 2017年
2017(平成29)年、原子でできた極めて小さい自動車(分子自動車)を走らせるナノカーレースが開催され、日本チームも参加しました。原子を組合わせてバネやピンセット、モーターや車などのような動きをする構造につくられた分子のことを分子マシンといいます。2016(平成28)年のノーベル化学賞を受賞した研究テーマであり、将来的に、医療や情報等様々な分野での応用が期待されています。
平山令明/著 講談社 2018年
わたしたちの体はいろいろな分子で成り立っています。そのうち一番多いのが水でおよそ66パーセント、次いで多いのが16パーセントのタンパク質です。この本ではそのタンパク質を「主役」ととらえ、いかにタンパク質自体が生命を運営しているかを、やや専門的説明ながらカラーの立体構造図を交えて解説しています。
平山令明/著 講談社 2012年
結晶は、原子や分子が集まって規則的に並んだものです。ダイヤモンドや水晶のような、キラキラとした輝きや幾何学的な形は、原子や分子の整然とした配列によってできるのです。宝石とされるような鉱物の他にも、塩や砂糖、たんぱく質やウイルスも結晶になることを知っていますか。そのような神秘的で美しい結晶の秘密に迫ります。