今年の干支は申ですね。ヒトはサルから進化したといわれているように、どちらも霊長類という同じ動物のグループに入ります。ことわざに「猿真似」「猿知恵」などがあるように、人間にいちばん近い動物ですから、昔話にもよく登場します。『古事記』や『日本書紀』に登場する「猿田彦」や『西遊記』の主人公「孫悟空」もサルでした。
今回は申年にちなみ、サルが登場するおはなしや、サルたちの世界を取り上げた本を集めてみました。
さる サル 猿 申
最終更新日 2017年05月25日
さるが登場するおはなし
おはなしの中に出てくるさるのイメージは、その特徴である知恵が、ずるさと紙一重で表現されていることが多く、一般的には好ましく感じるというところにはつながりにくいかもしれません。ですが面白いことに、さるの特徴や行動パターンはそのままでも、地域やお国柄により、捉え方のニュアンスに少しずつ変化があるのです。昔話・民話、創作作品と、親しみやすい動物であるさるが出てくるおはなしを、どうぞ楽しんでみてください。
絵本
大江和子/文 太田大八/絵 童話館出版
がまどんが、稲穂を拾います。さるどんは、それで田づくりをしようと提案します。でも、いざ作業を始めると、さるどんは怠けていて、働くのはがまどんばかり。ところが秋になり、米が穫れると・・・。越後の昔話。
大川悦生/作 梅田俊作/絵 ポプラ社
山の畑で、昼に弁当のそば粉もちを食べたじいさまは、おなかがふくれて、いつの間にか眠ってしまいます。しばらくすると、山の中から出てきたさるたちが、じいさまをお地蔵様と思い込み、山のお堂に運び込みます。そして小判を投げつけ拝み始めるのでした。
太田大八/え 大江ちさと/ぶん トモ企画
あるところに、3人の娘を持ったじいさまがいました。ある日、山で畑をおこしていたら、大きな石が出てきたので、疲れていたじいさまは「この石を取り除いてくれたら娘をやろう」と独り言を言いました。それを聞いていたさるが石をどかし「娘をもらいにいくからな」と言ってくるのでした。
瀬田貞二/再話 田島征三/画 福音館書店
ある夜、泥棒と狼が、じいさんとばあさんのくらす家に忍び込みます。そこで聞いた話では・・・。
木島始/さく 梶山俊夫/レイアウト 佑学社
さるやうさぎやかえるたちが、腕比べ力比べをしながら生き生きと動き回る絵本の形に作り上げられています。鳥羽僧正の作と伝わる『鳥獣戯画絵巻』より。
木下順二/作 清水崑/絵 岩波書店
さるかに合戦のおはなしです。
まついただし/ぶん あかばすえきち/え 福音館書店
呉承恩/原作 唐亜明/文 于大武/絵 偕成社
石から生まれた孫悟空が、三蔵法師に助けられ、猪八戒や沙悟浄とともに、お経を求めて天竺にたどり着き、お釈迦様と対面するまでが描かれています。
ポール・ガルドン/さく きたむらよりはる/やく ほるぷ出版
すばしっこいさると、おなかをすかせたわにの知恵比べのおはなしです。いろいろな動物の姿で現れるブッダの前世を語ったインドの古い寓話集、ジャータカ物語より。
A.ラマチャンドラン/さく・え 松居直/やく 福音館書店
インドに古くから伝わる物語『ラーマーヤーナ』より。
ヤン・サン/再話 ドゥア・リー/下絵 ヤン・ロン/刺繡 ヤン・イェン/刺繡 やすいきよこ/訳 福音館書店
トラは、森のなかの暴れもの。サルはいつかトラをやっつけてやろうと思っていました。そこで、大きなスズメバチの巣があるところへ、トラをさそい出します。ラオスのモン族の民話。
稲村哲也/再話 結城史隆/再話 イシュワリ・カルマチャリャ/画 福音館書店
貧しい男の子が、拾った銀貨で子ざるを買いました。やがて、子ざるは村人を苦しめていた悪魔を追い払い、富をもたらします。ネパールの民話。
ネイサン・クマール・スコット/文 T.バラジ/絵 なかがわちひろ/訳 アートン
まめじかとさるのとんちの効いたインドネシアの昔話です。
ジョン・キラカ/作 若林ひとみ/訳 岩波書店
漁師であるチンパンジーの魚がイヌに盗まれてしまいます。それを見ていたライオンやカバやゾウなど村中の動物たちが、大騒ぎをしはじめます。タンザニアのおはなし。
マーガレット・レイ/文 H.A.レイ/絵 光吉夏弥/訳 岩波書店
動物園で愉快にくらしていたジョージでしたが、外の世界を知りたくてたまりません。ある日、ついに檻を抜け出し外の世界に飛び出しました。
エズフィール・スロボドキーナ/さく・え まつおかきょうこ/やく 福音館書店
ぼうしうりが、木の下で昼寝から目を覚ましてみると、売り物のぼうしがみんな無くなっていて・・・。
エゴン・マチーセン/作 松岡享子/訳 こぐま社
ちっちゃなさるのオズワルドが友だちと遊んでいるところへ、ボスざるがやってきました。そしてボスざるは、みんなを家来にしていばりだすのでした。
ジャン・ド・ブリュノフ/さく やがわすみこ/やく 評論社
さるのゼフィールが、ババールからプレゼントされたボートで釣りをしていると、釣ざおに引っかかったのは、なんと人魚でした。ぞうのババールシリーズの作者によるおはなしです。
ルース・ボーンスタイン/さく いわたみみ/やく ほるぷ出版
誰もが、小さいゴリラのちびちびが大好きです。そして、みんながちびちびに会いにやってきます。
シビル・ウェッタシンハ/作・絵 いのくまようこ/訳 徳間書店
おじさんが町で傘を買って帰りますが、途中で傘を無くしてしまいます。何度買っても消えてしまうのです。その犯人は・・・。
物語
ヒュー・ロフティング/作 井伏鱒二/訳 岩波書店
動物と話のできるドリトル先生は、疫病に苦しんでいるアフリカのサルたちを救うために、ツバメの案内で航海に出ます。
ヒュー・ロフティング/作 井伏鱒二/訳 岩波書店
南アフリカの海に面したぼくの町では、みんなヒヒを怖がり嫌っていました。ある日ぼくは、出会った赤ちゃんヒヒがさわりたくて、バナナを取り出してしまいます。大人の人から、餌を与えてはいけないと言われていたのに。
リリアン・ホーバン/作 木島始/訳 文化出版局
今日は、春の大掃除です。チンパンジーのアーサーは、おもちゃ箱をきれいにしようと思い立ちます。
椋鳩十/作 多田ヒロシ/絵 理論社
屋久島の大自然のなかで生きている野生ざるのおはなしです。
呉承恩/作 伊藤貴麿/編訳 岩波書店
エルジェ/作 川口恵子/訳 福音館書店
さるたちの世界、その生態と暮らし
人間と同じヒト科に分類される類人猿には、チンパンジー属やゴリラ属、オランウータン属などがあります。チンパンジーは、道具を作って上手に使うことが知られています。そのチンパンジーとヒトの遺伝情報は、98%以上共通していて、ニホンザルやヒヒなどのサルたちとの違いより小さいのだそうです。家族のような群れで暮らし、社会生活を大事にするゴリラ。ヒトを感じさせるしぐさから「森の哲学者」とも呼ばれているオランウータン。生態やくらしを知ることで、こうした動物たちのことを、さらに深く理解したくなります。
いろいろな種類のサル
小田英智/構成・文 津田堅之介/写真 偕成社
ニホンザルは九州、四国、本州に広く分布します。この本には、各地のニホンザルのくらしぶりが紹介されています。なかでも、青森県の下北半島に生息するニホンザルは、世界のサルのなかでも、もっとも北にくらすサルで、北限のサルとも言われています。
ジェーン・グドール/著 松沢哲郎/日本語版監修・訳 くもん出版
30年以上にわたってチンパンジーの研究をしてきた著者が、タンザニアの国立公園に住むチンパンジーのくらしを、豊富な写真とともに解説しています。チンパンジーの、とても豊かな表情が捉えられています。
オナー・ヘッド/文 マシュー・ニコラス/絵 ゆりよう子/訳 小峰書店
松沢哲郎/文 藪内正幸/絵 福音館書店
松沢哲郎/著 岩波書店
スコット・スティードマン/文 ジェリー・ヤング/写真 徳永優子/訳 ブックローン出版
サルたちの習性や子育ての様子、仲間とのくらしなどが、写真やイラストで分かりやすく紹介されています。
たかはしあきら/ぶん おおともやすお/え 福音館書店
野生のオランウータンは、マレーシアのボルネオ島とインドネシアのスマトラ島にしか住んでいません。マレーシア語で「森の人」という意味を持つオランウータンは、いったいどんな暮らしをしているのでしょう。
岩合日出子/ぶん 岩合光昭/しゃしん 福音館書店
山極寿一/写真・文 田中豊美/画 文溪堂
ゴリラはアフリカの熱帯雨林に住む大型のサルです。ほぼ、草食性で、草木や果物を食べます。生まれたときの重さは約2キロ、3歳くらいまでお母さんのおっぱいをのんで育ちます。
山極寿一/文 阿部知暁/絵 福音館書店
島泰三/文 笹原富美代/絵 福音館書店
マダガスカルに生息するアイアイは、体重3キログラム、体長50センチで、密林に暮らす夜行性のさるです。18世紀に発見され、100年間もリスの仲間だとされていました。