和歌と聞くと平安時代の高貴で雅なイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。しかし、和歌の歴史は古く、その始まりは神話の時代にまでさかのぼります。古来より、日本人は歌を楽しみ、天皇から庶民まで身分や老若男女を問わず、自らの思いを和歌に託してきました。
力をもいれずして天地を動かし
目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ
男女のなかをもやはらげ
猛き武士の心をも慰むるは歌なり
(『古今和歌集』仮名序より)
昔の人の和歌を鑑賞する時、現代の私たちにも詠み人の見た情景が鮮やかに浮かび、また、その感情に共感し心を揺さぶられることも少なくありません。
今回の展示では、和歌の歴史のはじまりである上代、中古の和歌や、現代にも続く歌会始の歌集に関する資料を集めました。和歌の美しい調べに触れて、日本人のこころを感じてみませんか?心に留めておきたい一首に出会えるはずです。
和歌 ‐日本人のこころ‐
最終更新日 2017年05月25日
古事記
古事記は最古の歴史書といわれています。古事記の中で最初に出てくる和歌は、ヤマタノオロチ退治で有名なスサノオノミコトがクシナダ姫を妻に迎え、新居を出雲の地に定めた際に詠んだ歌です。「八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣つくる その八重垣を」古事記に記された神々は、どこか人間くさく、歴史書というより壮大な小説のようにも感じられます。歌の解釈も含めて、古事記に関する本を読み比べてみてはどうでしょうか。
辰巳正明/監修 新典社 2014年
古事記に登場する全112首の和歌を丁寧に解説し、古事記の歌に特化し、歌を味わう本となっています。
倉野憲司/校注 岩波書店 1991年
古事記の書き下し文に注釈を施したもので現代語訳はありません。現代語訳にとらわれず、書き下し文そのままを楽しみたい人におすすめです。
福永武彦/訳 河出書房新社 2003年
古事記の名訳として多くの人に支持されています。子どもの頃に、福永氏の児童書「古事記物語」を読んだ人も多いのではないでしょうか。大人向けに出版されたこの本も、分かりやすい言葉を選んで現代語訳がなされています。
池澤夏樹/編 河出書房新社 2014年
詳しい注釈が読みやすく、古代歌謡がいきいきと力強く訳されています。
清川妙/著 いきいき株式会社出版局 2012年
古事記の中から7つの恋物語を選んで解説しています。
斎藤英喜/監修 PHP研究所 2012年
今どきの言葉で、明るくやさしく解説されています。表紙のイラストに魅かれ若い人も気軽に手に取れるのではないでしょうか。笑ったり、どうして?と驚いたり、楽しい1冊になっています。
こうの史代/著 平凡社 2012年
ボールペンで手書きされた書き下し文のやわらかさと、かわいらしく描かれた神々のイラストを頼りに、古事記の世界をイメージで読み解くコミックです。
竹田恒泰/著 学研パブリッシング 2011年
万葉集 ‐最古の和歌集‐
万葉集は8世紀ごろまでの和歌を集めた、日本最古の和歌集です。その名は、「万の言の葉」を集めたとする説もあり、天皇、貴族から下級官人、防人など様々な身分の人が詠んだ歌が4500首以上集められています。男女の恋の歌である「相聞歌(そうもんか)」、死者を弔う「挽歌(ばんか)」、そして、多様な場面をうたった「雑歌(ぞうか)」の3種類で構成されています。
佐竹昭広/校注 山田英雄/校注 工藤力男/校注 大谷雅夫/校注 岩波書店 2013年
1999(平成11)年刊行の新日本古典文学大系に基づき、現代語訳と注釈を付した新版です。新日本古典文学大系の校注者たちが万葉集を読み直し、歌によっては読みや解釈を改めています。新版に注いだ校注者の熱意が伝わります。
中西進/著 四季社 2003年
万葉集の中から秀でた歌を300首選んで解説をしています。文字も大きく、読みやすくなっています。
坂本伸幸/著 牧野貞之/写真 小学館 2014年
坂本伸幸/著 牧野貞之/写真 小学館 2015年
万葉集の舞台となった土地の写真と、万葉集の専門家による解説を掲載しています。美しい写真で万葉の地を旅することができます。
上野誠/著 PHP研究所 2002年
いきいきとした万葉集の美しさを分かりやすい解説で味わえます。読み下し文に語句の説明をつけ、その歌の世界を物語にしたり、エピソードによって紹介しています。
岡野弘彦/著 日本放送出版協会 2005年
額田王、柿本人麻呂などの代表的歌人だけでなく、名もない防人の歌も味わいつつ、万葉の時代と暮らし、歌人達の実像に迫ります。
犬飼隆/著 青簡舎 2015年
万葉人の音声やアクセントを推定し、約30首の万葉歌の訳と解説、歌い方を掲載しています。琴の伴奏で歌った音声を収録したCD付きです。
北日本新聞社/編 北日本新聞社 2013年
越中の地で詠まれた、あるいは越中の地を意識して詠まれた「越中万葉」を現代歌人が現代風に詠み直しました。現代の感覚やものに置き換え、若い人が使うイマドキ語で詠う翻訳の妙を楽しめます。
荒木清/著 中経出版 2005年
現代人と共通する恋の機微をみることができます。また、万葉人の人間的な心の豊かさとエネルギーに驚かされます。
上野誠/著 小学館 2005年
現代風に訳した万葉集の恋の歌を、鮮やかな写真と共に楽しめます。「万葉集は難しそう」という人に、おすすめの1冊です。万葉の時代の人々を身近に感じることでしょう。
古今和歌集 ‐最古の勅撰和歌集‐
最古の勅撰和歌集(天皇の命令でつくられた歌集)といわれているのが古今和歌集です。万葉集の力強い歌風に対し、優美で繊細な歌風となっています。冒頭に付されている仮名序は、日本で最初に和歌の本質を説いた歌論です。紀貫之や小野小町の歌を初めとし、平安時代の歌が多く収録されています。
小学館 1994年
全歌を注釈、原文、現代語訳の三段に構成しています。上段に注釈、中段に原文、下段に現代語訳を載せており、読みやすくなっています。
小町谷照彦/訳注 筑摩書房 2010年
古今和歌集全20巻の和歌が収録された文庫本です。原文、現代語訳、注釈からなり、巻末には地名索引や歌語索引がついています。
小学館 2008年
『古今和歌集』と『新古今和歌集』の中から厳選した300首余りの歌が収められています。一首ずつ簡単な訳が原文の後に掲載されており、巻末には歌人一覧がついています。「日本の古典をよむ」シリーズは全20巻で、可愛らしく手にとりやすい装丁になっています。
中島輝賢/編 角川学芸出版
古今和歌集約1100首のうち、70首をとりあげてわかりやすく解説しています。すべての歌にルビがふってあり、朗読にも最適です。
織田正吉/著 講談社 2000年
古今和歌集は、「言葉遊び」と「ユーモア」の歌集という視点から解説しています。柿本人麻呂や、六歌仙でありながら一首しか存在しない喜撰法師の謎にせまります。
神田龍身/著 ミネルヴァ書房 2009年
古今和歌集の編さんのほか土佐日記の執筆で知られ、同時に平安時代の歌人でもあった紀貫之の言葉を解読し、その心を明らかにしていきます。
歌会始、御製・御歌集
毎年1月に行われる「歌会始」では、皇族の歌や一般応募から選ばれた10人の歌が披露されます。人々が集まり歌を披露する「歌会」は、万葉集の時代から行われ、天皇が催す「歌御会始」は、遅くとも鎌倉時代には始まっていたといわれています。歌会始の歴史や御製(ぎょせい、天皇の和歌)、御歌(みうた、皇后の和歌)に関する本を紹介します。
菊葉文化協会/編 日本放送出版協会 2009年
1991(平成3)年から2009(平成21)年までの歌会始で披講された作品を収録しています。歌会始について詳しく知ることができる本です。歌会始の詠進要領も載っています。
国民文化研究会/編著 小柳陽太郎/編著 草思社 2005年
古代から現代まで、聖徳太子、西郷隆盛など、180人以上の歴史上の人物の和歌に触れることができる本です。歴代天皇の歌も多数紹介されています。
国民文化研究会/編 展転社 1999年
1990(平成2)年から1999(平成11)年にかけての年頭の御製・御歌をはじめ、新聞等で発表されたその他の御製・御歌も収録。それぞれの歌の背景を丁寧に解説されています。
皇后/著 パイインターナショナル 2015年
皇后として母として、様々な側面をもつ美智子さまの和歌を美しい写真と共に紹介しています。
割田剛雄/著 海竜社 2015年
戦没者への祈り、慰霊の御製・御歌がまとめられた一冊です。明治・大正・昭和天皇皇后両陛下の御製・御歌も収録されています。
辺見じゅん/著 文藝春秋 2012年
打越孝明/著 KADOKAWA 2014年