今年2015(平成27)年、バロック時代を代表する作曲家、バッハとヘンデルが生誕330周年を迎えます。バッハの「G線上のアリア」や「小フーガ ト短調」、ヘンデルの「メサイア」のハレルヤコーラスといった有名な楽曲は、音楽の授業等で聴いたことのある人も多いのではないでしょうか。
今回の展示では、バッハ、ヘンデルをはじめとした今年メモリアルイヤーを迎える作曲家たちを中心に、彼らの生涯と名曲の生まれた背景を知ることのできる資料を紹介します。
作曲家たちの生涯 ‐バッハ&ヘンデル生誕330周年‐
最終更新日 2017年05月25日
生誕330周年 バッハとヘンデル
その後の音楽界に与えた影響の大きさから「音楽の父」と呼ばれるバッハ。その彼と同じ年に生まれ、その存命中はバッハを凌ぐ人気作曲家だったヘンデル。バロック時代を代表する2人の大作曲家の人生はどのようなものだったのでしょうか?
バッハ
フォルケル/著 柴田治三郎/訳 岩波書店 1988年
音楽家フォルケルによるバッハ評伝。その死後、忘れられつつあったバッハの業績をまとめ、19世紀のバッハ・ルネサンス(バッハ再発見)の一助となった名著です。著者が音楽家という事もあり、バッハの生涯の記述に加えて、楽曲の詳しい解説がされているのが特徴です。巻末には、年譜・家系図・主な作品一覧も収録されています。
アンナ・マグダレーナ・バッハ/著 山下肇/訳 講談社 1997年
バッハの2番目の妻・マグダレーナが書いたといわれる、バッハの回想記。歌手であった妻に贈った可愛らしい歌、妻子のクラヴィーア(鍵盤楽器)練習のために書き下ろした多くの練習曲。20人もの子どもがいたバッハの家庭での顔は、良き夫で良き父でした。晩年は「老バッハ」と呼ばれ、厳格で寡黙なイメージのあるバッハですが、愛妻から見たバッハは感情豊かで魅力的。バッハへの愛に満ちた1冊です。
ヘンデル
渡部恵一郎/著 音楽之友社 1980年
日本におけるヘンデル研究の古典的名著。生誕の地ドイツ、音楽修行の地イタリア、そして成功の地イギリスへ。銅細工師の息子であった少年が、どのようにして異国の地の宮廷作曲家となったのか、ヘンデルの生涯を追体験できます。また、巻末には作品解説や年表の他に交友人名リストが掲載されており、多くの人がヘンデルの楽曲を愛し、支援したことがうかがえます。
三澤寿喜/著 音楽之友社 2007年
ヘンデルの生涯とその作品について書かれた1冊。特に各作品の解説が充実しており、各作品の概要(特徴)から王室を含めた観客の評価、作品にまつわるエピソードまで紹介されています。巻末には年譜・作品一覧・人名索引が収録されています。
2015(平成27)年、メモリアルイヤーを迎える作曲家たち
今年メモリアルイヤーを迎えるのは、バッハとヘンデルだけではありません。シベリウスにサン=サーンス、ラヴェル等、名前だけではピンと来なくても、その作品のメロディーは一度は聞いたことがあるはずです。この機会に、楽曲からではうかがい知れない彼らの一面をのぞいてみませんか?
ミヒャエル・シュテーゲマン/著 音楽乃友社 1999年
「動物の謝肉祭」でおなじみのサン=サーンス。幼い頃から神童としてもてはやされ、幅広い分野にわたり300曲以上の作品を残した彼は、その一方で波乱に富んだ生涯を送りました。時代の流れの中で、ときに「革命家」として讃美され、また「反動家」として攻撃された一人の作曲家の人生を数多くの証言から検証した1冊です。分野ごとに作品が詳しく解説されていることに加え、巻末には年譜・主要作品の一覧が収録されています。
ハンヌ=イラリ・ランピラ/著 筑摩書房 1986年
北欧の国・フィンランドを代表する作曲家、シベリウスの90年にわたる生涯を描いた評伝。映画「ダイ・ハード2」の挿入曲としても有名な「フィンランディア」等、フィンランドの民族性を帯びた音楽は、当時帝政ロシアの圧制に苦しめられていたフィンランド国民の精神的な支えになりました。ですがこの本を読むと、作曲する上での葛藤や恋の体験等、シベリウスの人間くさい一面もたくさん見えてきます。本作の著者がフィンランド人ということもあり、親しみを込めた語り口と豊富な写真で彼の生涯をなぞることのできる1冊となっています。
ジャン・エシュノーズ/著 みすず書房 2007年
同じ旋律を何度も繰り返すことで知られる名曲「ボレロ」の作曲者、モーリス・ラヴェル。「ボレロ」を書き上げて以降、音楽を愛する気持ちはそのままに、彼の体は少しずつ衰えていきます。思い通りにならない中で悩みながらも、音楽と向き合い続けようとしたラヴェルの晩年の十年間を、淡々とした文体ながらも音楽のように生き生きと描き出した小説作品です。
楽曲を楽しむ
偉大な作曲家たちの魅力はやはり、彼らの作り出した楽曲たち。名曲の生まれた背景や鑑賞のポイントを知りながら、楽曲を楽しむことができる資料を紹介します。
吉松隆/著 幻冬舎 2012年
バッハをはじめ、ベートーヴェン、モーツァルト、ショパン等、10人の大作曲家のプロフィールと代表曲を紹介した1冊。作曲家たちの作曲スタイルや副業について等、作曲家に関する豆知識の紹介や、「ヴィヴァルディ VS バッハ」のバロック音楽の人気対決といった共通点を持つ作曲家の比較等、面白い情報が凝縮されています。
三枝成彰/著 朝日新聞出版 2013年
映画やドラマ音楽の作曲を手掛ける著者が、バッハ、ハイドン、ドヴォルザーク等の12人の作曲家の名曲を初級・中級・上級編に分類。さらに、著者独自の「聴きやすさ・知名度・泣ける」という3段階で評価を行っています。指揮者が異なる同じ楽曲の聴き比べや、楽曲が使用されている映画の紹介等、独自の視点による名曲紹介を楽しむことができます。
『この曲、わかる?』編集委員会/編 ヤマハミュージックメディア 2010年
それほどクラシックに詳しくない人でも、メロディーは聞いたことがある、そんなクラシックの名曲厳選100曲をクイズ形式に収めた1冊。付属のCDに収録された楽曲のさわりを聴きながら、曲名や作曲家の名前、各曲の魅力を楽しく知ることができます。それぞれの曲にまつわる豆知識や、答えの曲に関連したおすすめの作品も紹介されており、自分なりの楽しみ方でクラシックへの理解を深められます。
作曲家たちの素顔
バッハは愛妻家、ヘンデルは大食漢で肥満!?作曲家たちの素顔は実はとっても面白い!
作曲家たちの少年時代・恋愛事情・友情・果てはカルテまで…。作曲家たちの素顔が垣間見える1冊を紹介します。
フリッツ・スピーグル/著 山田久美子/訳 音楽之友社 2001年
手の届かない女性にばかり恋して「エリーゼのために」等、愛する女性のために曲を書き続けたベートーヴェン。恋人、ジョルジュ・サンドの犬を見て「子犬のワルツ」を作曲したショパン。名曲誕生の裏には、作曲家たちの大恋愛がありました。彼らの日記や手紙に書かれた愛の言葉は、大作曲家を身近に感じさせてくれます。最終章には、少し視点を変えた「大作曲家のペットたち」という章もあります。
ウルリッヒ・リューレ/著 鈴木皓/訳 中央公論社 1996年
音楽家一家の神童だったバッハ。音楽好きな鍛冶屋の息子だったハイドン。生まれた環境も時代も異なる、7人の作曲家の少年時代に焦点をあてた1冊。少年時代の彼らは、月明りで写譜をしたり、紙がなくなってしまうほど作曲にのめりこんだりと、音楽に対してとことんひたむきです。天才と呼ばれても、「私はただ一生けんめい努力しただけ」とこたえるバッハの一言は、彼の少年時代を知ることで、より重みが増します。
五島雄一郎/著 医薬ジャーナル社 2002年
医師である筆者が、40人の作曲家のライフスタイルと作品との関係を調べた1冊。肖像画どおりの肥満であったバッハとヘンデルは、高血圧や脳卒中に苦しんだ?シベリウスが65歳以降に筆を絶ったのはうつ病が原因?病気と作品の深いつながりや、作曲家の豪快で、奔放なライフスタイルに驚かされます。
ジェラール・ジュファン/文 クリスティーヌ・バスタン/写真 ジャック・エヴラール/写真 西村書店 2012年
ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シベリウス、ラヴェル等、23人の「音楽家の家」の写真集。彼らの愛用の品や愛した風景等、一つ一つの家からは、その場所で作曲を行っていた音楽家たちの日常が浮かびあがってきます。その場所で生み出された楽曲を聴きながら楽しみたい、美しい写真集です。
三枝成彰/著 中央公論社 1997年
ベートーヴェンやシューベルトをはじめとした18人の作曲家の家系から精神状態、交友関係までを履歴書風に書き起こしたユニークな1冊。歴史背景や作曲観はもちろん、性格や他の作曲家との関係等、様々な興味深いエピソードを交えて読みやすく構成されており、読み終えた後には作曲家たちの人となりがぐっと身近に感じられます。
児童向け読み物
作曲家たちの生涯をわかりやすく、楽しく理解するには、実は子ども向けの伝記がおすすめ。やさしい文章で作曲家たちの生涯を知ることができます。
やなせたかし/文・絵 音楽之友社 1980年
アンパンマンで知られる作家・やなせたかしが、一からバッハについて勉強し、書き下ろした「バッハ伝」。子どもに向けてやさしく書かれたバッハの波乱の生涯は、物語として楽しく読むことができます。
『王宮のひびきヘンデル ジュニア音楽図書館 作曲家シリーズ13』
生源寺美子/文 音楽之友社 1982年
中学受験に失敗して落ち込んでいた友也は、ある日大学生の高志にいさんにヘンデルの美しい音楽を聴かせてもらいます。友也はヘンデルの才能をうらやましく思いますが、高志にいさんが教えてくれたヘンデルの人生は困難の連続で…。音楽をすることに対する父の猛烈な反対、創立に参加した王室音楽アカデミーの破産、どんな逆境にもくじけないヘンデルの生き方に友也は励まされていきます。
スティーブン・イッサーリス/著 板倉克子/訳 音楽之友社 2003年
著者が自分の息子に向けて、音楽家の人生と人柄について書いた人気作。本書では、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、シューマン、ブラームス、ストラヴィンスキーの6人を紹介しています。まるで自分の友達を紹介するような著者の語り口は痛快!あっと驚く大作曲家の新たな一面を楽しむことができます。
ひのまどか/著 リブリオ出版 1994年
シベリウスの生涯を、わかりやすい言葉で物語のように綴った伝記。障害を乗り越えて結ばれた妻との絆や、作曲に対する苦悩、不安定に揺れる心の機微が細やかに描かれています。家族を残していきなり失踪したり、莫大な借金を抱えたりと困った逸話も数多く交えられていますが、どこか憎めない人物として心に残る、愛のある1冊です。