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2012年度展示情報一覧
はばたくひばりクラブ -戦後小御門村の女性たちと生活改善運動-

はばたくひばりクラブ -戦後小御門村の女性たちと生活改善運動-

最終更新日 2016年11月08日

展示期間 : 12月から05月

展示場所 : 本館2階展示


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 本展示は、『成田市史研究』36号(平成24年3月発行)に掲載された「吉江淨善氏に聞く小御門村・下総町の暮らし」の聞き取り調査の際、ご提供いただいた資料により構成しました。特にスライド映画「共同田にたつ婦人たち」は、約60年前の市域の生活風景を記録した貴重な写真資料です。
お気付きの点や新しい情報がございましたら図書館までお知らせくださいますようお願いいたします。

※ 7月2日(火曜日)から8月30日(金曜日)、下総公民館ロビーで写真展「はばたくひばりクラブ‐戦後小御門村の女性たちと生活改善運動-」を開催します。
・時間 午前9時30分から午後5時(最終日は正午まで)
・休館 月曜日、7月16日(火・祝)、なお、下総ふるさとふれあい納涼まつり期間中は展示は行いません。

  今回の展示にあたり、乗願寺 吉江淨善氏、株式会社 農文協プロダクション、株式会社 朝日新聞社、株式会社 日本農業新聞より資料の提供・ご協力をいただきました。

※展示コーナー右側に、「展示資料リーフレット」 をご用意いたしました。ご自由にお持ちください。

展示資料リーフレット【サイズ:434キロバイト】 PDF

生活改善運動

 戦後の農村の女性の生活は、苦労の多いものでした。農繁期には1日12時間以上の重労働。家に帰れば家事。おかずを作る時間があるならその分農作業に回したいほど忙しく、ご飯に漬物と味噌汁だけで食事を済ませ、寝たと思ったらもう朝。過労と栄養不足とで倒れる人も少なくない時代でした。

1)国では

 農村の民主化を目指すGHQ(連合国総司令部。進駐軍とも呼ばれていました)の指導で、厚生省内に農村女性の生活環境改善と、地位の向上を目指す新しい課が出来ました。

2)県では

 生活改良普及員というスタッフを採用しました。家政や被服・料理などを学んだことが条件でしたので、ほとんどは学校を出たての女性たちでした。農村に暮らす人々を訪れた生活改善指導員がまずおこなったのは、カマドの改善と休息の推奨、食生活の指導でした。また、人を集めるために幻灯も上映されました。
 「身近なことを工夫すれば暮らしが良くなるのだと気付いてほしい。自分たちで考えて、提案して、実現する力をつけてほしい。」そんな気持ちで行われた生活改善運動ですが、前例のない新しい仕事に現場は暗中模索の状態でした。指導員たちの多くは農村の実態を把握するのにまず苦労し、「カマド屋さん」、「料理の先生」以上に、なかなかなれずにいました。しかし、農村女性の生活に関して問題意識を持っていた女性たちにとって、この時代の流れは、羽ばたくチャンスでした。

3)小御門村では

 千葉県小御門村(現成田市名古屋近辺)にひばりクラブというグループが出来ました。
ひばりクラブの活動は、藤枝文子さんという地元出身の指導者を得て、全国でも稀にみる成功例として注目されるまでになりました。その記録が、集会に使われたお寺(乗願寺)に大切に保管されていました。彼女たちの活躍を見てみましょう。
 

生活改良普及員第一期生 藤枝文子さん

『暮らしの中の問題』篠崎輝夫さんによる表紙絵。
『暮らしの中の問題』
篠崎輝夫さんによる表紙絵。
 藤枝文子さんは、小御門村の村長を務めた藤枝源重郎さんの末娘。戦争のため地元に戻っていた藤枝さんは、昭和24年、生活改良普及員の第一期生として県庁に入り、小御門村に生活改善クラブを立ちあげました。
藤枝文子さんが『農業千葉』に寄稿した原稿
藤枝文子さんが『農業千葉』に寄稿した原稿
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 農村の生活をテーマに『農業千葉』に連載したコラムは読者の共感を呼び、『暮らしの中の問題』という1冊の本になりました。藤枝さんは県庁退職後、戸坂女子短大教授を務めています。

ひばりクラブ

カマドの説明をする吉江みつるさん
カマドの説明をする吉江みつるさん
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 尋常小学校ができる前は、お寺(乗願寺)が学校代わりでした。戦時中、農繁期託児所が推奨された時も、お寺で子どもたちを預かりました。お寺に集まって活動するというのが受け入れられやすい土地柄でした。
お寺の奥さん吉江みつるさんは、内宿地区のひばりクラブだけではなく、村中の生活改善運動の中心人物の一人として、精力的に活動していました。
荒れ地を開墾して女性たちの共同田とし、生活改善クラブの活動費にあてたひばりクラブは、全国でも稀に見る成功例として、新聞で大きく取り上げられました。
ひばりクラブの活動の様子を伝える昭和27年7月31日の朝日新聞
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ひばりクラブの活動の様子を伝える昭和26年3月5日の日本農業新聞
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スライド映画『共同田に立つ婦人たち』

 ここに紹介する写真は、乗願寺 吉江淨善氏が所蔵していたスライドフィルムで、小御門村内宿の婦人たちが田んぼを共同で耕し、管理し、その収穫をもって共同の財産をつくり、一歩一歩理想に向かって生活を前進させている実例を記録したものです。全30コマ。
ひばりクラブの活動の様子を残した幻灯スライド写真の表紙
ひばりクラブの活動の様子を残した幻灯スライド写真の表紙
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1反3(約1,300㎡)の荒地が立派な水田に変わり、田植え作業する会員
1反3(約1,300㎡)の荒地が立派な水田に変わり、田植え作業する会員
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この年の収穫は3俵。このお米の使い道をお寺に集まって相談する会員
この年の収穫は3俵。このお米の使い道をお寺に集まって相談する会員
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毎月5日を「女たちの日」とし、お寺に集まり料理の講習会を開いた時の様子。
毎月5日を「女たちの日」とし、お寺に集まり料理の講習会を開いた時の様子。
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記録係が会員の役割分担を書き出す
記録係が会員の役割分担を書き出す
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会員の研究や意見を伝えるために謄写版を購入。
会員の研究や意見を伝えるために謄写版を購入。
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木綿の普段着と足袋20人分を購入
木綿の普段着と足袋20人分を購入
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『共同田に立つ婦人たち』の幻灯スライド説明台本
『共同田に立つ婦人たち』の幻灯スライド説明台本
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 約60年前の写真ですが、農村の女性たちの日常生活を撮影している、撮影年代・撮影場所・被写体となった人物が概ね特定できる等の点で大変貴重な資料です。2階の参考資料室にてご覧いただけます。(館内閲覧のみ)

ひばりクラブの活動記録ノート

小御門村生活改善クラブの活動記録ノート
小御門村生活改善クラブの活動記録ノート
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 当時の書記係がつけていたノートです。カマドの見学や、講師を招いての勉強会などさまざまな活動内容が記録されています。
表紙裏に貼られた封筒は、スライド映画の出版社のものです。
カマド見学や藤枝さんを招いての月例会の記録
カマド見学や藤枝さんを招いての月例会の記録
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 このノートを読んでいくと、カマドの改良や料理の講習から始まって、「政治や世界情勢の事も知りたい」と、だんだん視野が広く積極的になっていく様子が読み取れます。「なぜ小御門村がモデル地区に選ばれたか。それは受け入れ体制が整っていたから。村長自らが率先して自分の家の冠婚葬祭を簡素化している。」と、県庁より招かれた講師の談話が記録されています。女性たちから始まった生活改善運動は、男性たちにも影響を与え、村はモデル地区になりました。