資料名色紙1 (『白骨』掲載)
著者名三橋鷹女
出版者
作成年 1950

書き下し文

ねこやなぎ 女の一生 野火のごと

解題

 第3句集『白骨』(1952(昭和27)年)所収。1950(昭和25)年の作。初出は『俳句研究』1950(昭和25)年4月号で、「囀り」と題する6句中の冒頭。初出の表記は「猫柳女の一生野火のごと」となっており、句集でも同じ表記である。

 三橋鷹女は女性性に強くこだわるとともに、その女性性を乗り越えようとした女性俳人として際立った存在である。たとえば、『白骨』の中の最も有名な句、

 白露や死んでゆく日も帯締めて

は、終生、女性性に強くこだわる凛とした姿勢が貫かれている。他方、「遺作二十三章」の中の有名な句、

 千の蟲鳴く一匹の狂ひ鳴き

は、女性性を乗り越えた句であろう。この句は「ねこやなぎ」から発想して、それを「女の一生」へと連想を広げた女性性の濃いものである。「ねこやなぎ」は、早春、葉に先立って絹状の白毛が密生したかわいらしい花穂をつける。その姿から、まだ人生を歩み始めたばかりの無垢で可憐な幼女を連想し、さらに、野焼きの野火のような起伏に富んだ女の一生へと連想を広げたのである。野の枯草を焼く野火は炎を上げながら勢いよく燃え広がってゆき、あるところではくすぶりつづけ、再び燃え上がったりしながら広がってゆく。それと同じように、女の一生もさまざまな情念が激しく燃え上がったり、あるときには鬱屈したり、鎮静化したりしながら起伏のある道をたどる。さまざまな情念に翻弄されながらの女の一生を、いわば女の業(ごう)として鷹女は捉え、受け止めていただろう。

(川名大)

NSIN(書誌ID)DL20151000190
種別自筆の書
細目1枚物
ページ数
大きさ(縦×横)21.1cm×18.1cm
資料群名三橋鷹女資料
目録番号32
撮影年月日2014/01/17
掲載枚数 1 枚
備考ヨゴレ・シミ
所蔵個人所蔵
分類911.368
件名三橋鷹女
件名(成田)成田市-三橋鷹女
キーワード(成田)
地域コード9N
郷土分類913.68