資料名色紙2 (『橅』掲載)
著者名三橋鷹女
出版者
作成年 1966

書き下し文

椿ひとへ 死は生き生きと 蕋の中

解題

 第5句集『橅』(1970(昭和45)年)所収。1966(昭和41)年の作。初出は『俳句評論』第54号(1966(昭和41)年3月10日発行)で、「追悼篇」と題する32句中の第3句。初出の句形は「椿一輪死は生き生きと蕋の中」となっている。 句集では「椿一重死は生き生きと蕋の中」と改められた。

 椿の花には紅椿・白椿・紅白絞(しぼ)りなどの品種があり、一重椿も八重椿もある。この句の椿のイメージは、一重で大輪の鮮やかな紅椿がふさわしい。春になって、その大輪の艶麗な紅椿が開花して、生き生きとした生命感を湛えている。しかし、鷹女は咲き誇る紅椿の花弁の中心にある蕋の中に、早くも死が生き生きと兆しているのを鋭く感受したのである。

 最盛期を迎えて咲き誇る椿の花を目にしたときには、その生き生きとした生命感に強く心をうたれるのが一般である。しかし、すでに70歳を目前にして、体調不良で入院、通院生活を送っていた鷹女は、やがて訪れる自己の死を明確に意識していた。そういう意識を持つ鷹女の目は、咲き誇る紅椿の蕋の奥にすでに死がはっきりと宿っていることを見逃がさなかったのである。

(川名大)

NSIN(書誌ID)DL20151000200
種別自筆の書
細目1枚物
ページ数
大きさ(縦×横)21.1cm×18.1cm
資料群名三橋鷹女資料
目録番号34
撮影年月日2014/01/17
掲載枚数 1 枚
備考シミあり
所蔵個人所蔵
分類 911.368
件名三橋鷹女
件名(成田)成田市-三橋鷹女
キーワード(成田)
地域コード9N
郷土分類 913.68