資料名短冊4 (『白骨』掲載)
著者名三橋鷹女
出版者
作成年 1951

書き下し文

かなしびの 満ちて風船 舞ひあがる

解題

 第3句集『白骨』(1952(昭和27)年)の巻末に置かれた句で、1951(昭和26)年の作。初出は未詳。三橋鷹女が俳句指導をしていた日鉄鉱業本社内の「ゆさはり句会」の俳句雑誌『ゆさはり』(謄写印刷)の第4号(1951(昭和26)年5月1日刊)には、4月26日の例会作品として、

 天曇る日は風船は悲しめり 三橋鷹女

 天が下に風船売となりにけり 〃

が載っているので、同時期の作と思われる。

 うららかな春の休日、子ども連れの家族らで賑わう遊園地や公園や広場などの一角では、糸をつけた色とりどりのゴム風船を売っているのをよく見かける。父や母に背負われた幼児が糸の端を持ってゴム風船を空中に浮かして喜んでいる姿は、いかにも春らしくほほえましい光景である。この句は、幼児の手から離れた風船がゆるやかに空中に舞い上がってゆく光景を詠んだもの。人の世を生きる女人のかなしみや人々のかなしみが満ちて、風船が舞い上がると捉えたところに、鷹女らしい特徴が現れている。

 この頃の鷹女の句には、

 蓑虫の相逢ふ日なし二つゐて

 昏れて無し冬木の影も吾が影も

 ふらここの天より垂れて人あらず

 天が下に風船売となりにけり

など、かなしびやさびしさが心に滲みる句が多く見られる。

(川名大)

NSIN(書誌ID)DL20151000180
種別自筆の書
細目1枚物
ページ数
大きさ(縦×横)36.2cm×6cm
資料群名三橋鷹女資料
目録番号27
撮影年月日2014/01/17
掲載枚数 1 枚
備考縁取りに墨
所蔵個人所蔵
分類911.368
件名三橋鷹女
件名(成田)成田市-三橋鷹女
キーワード(成田)
地域コード9N
郷土分類913.68