資料名俳句「十五章」自筆原稿 
著者名三橋鷹女
出版者
作成年

書き下し文

ふるさとは山鳩が啼く夢も老いて

綿虫に陽が射し耳らおよぎ出す

雲は中年紅絹裏を翻し

火祭のしんがりを行くちちとはは

韮に花遠墓原に風かよひ

山中に人を呼び入れ紅きのこ

曼珠沙華うしろ向いても曼珠沙華

黄落やおんば日傘におんば入れ

笹鳴に掌をのべ古風な庭木らよ

らつきよ漬けるたらちねの皮を剥ぎ

いんいんと暮れて八つ手の骨作り

青ざめて八つ手が咲けばあの世めく

木菟と更けぬ墳墓を揺り覚まし

笹子来て老木いまだ囀らず

ははを待つ睡気さましの山椒摺り

解題

 この自筆原稿はさくら製のB4の400字詰めの原稿用紙にペンで書かれ、字句の訂正や推敲の跡がほとんどなく、清書されている。鷹女が所属していた同人誌『俳句評論』の第127号(第14巻第4号)に「特別作品」として掲載するために、発行所の「俳句評論社」(渋谷区上原3丁目4番13号にあった高柳重信と中村苑子が住んでいた家)に郵送されたものである。「本文5号・天地29倍「2M」」などの割り付けの文字は、編集を担当していた高柳重信によるものである。15句の中には「ふるさとは山鳩が啼く夢も老いて」「いんいんと暮れて八つ手の骨作り」など、晩年の句としてよく知られた句も含まれている。この2句に代表されるように、晩年の意識が濃いことが全体的な特徴である。この自筆原稿15句は「十五章」という題名で『俳句評論』第127号にそのままの表記で掲載され、1972(昭和47)年4月30日付けで発行された。しかし、鷹女は同年4月7日に亡くなったので、この「十五章」を目にすることはかなわなかった。

(川名大)

NSIN(書誌ID)DL20151000140
種別
細目状(原稿用紙1枚)
ページ数
大きさ(縦×横)
資料群名三橋鷹女資料
目録番号22
撮影年月日2014/01/17
掲載枚数 1 枚
備考赤字で校正あり
所蔵成田市立図書館
分類911.368
件名三橋鷹女
件名(成田)成田市-三橋鷹女
キーワード(成田)
地域コード9N
郷土分類913.68