『金魚』 『赤菊』 『深夜』 『雛罌粟』 『母』 『女の子』 『牧場から』 『雪』 『胡瓜の種』 『雀』 『たそがれ』 『二階』 『写真』 『昼顔』 『鳥』 『窓』 『黒い壺』 『鎖』
奥付には発売所が春陽堂となっているが、実際は自費出版・直販方式であったようだ。本の体裁(特徴)は、袖珍版、天金、全ページ赤枠囲み、函入り、表紙と函の背文字は夏目漱石の筆字を縮小し使用している。装丁は1冊ごと異なり、第十編までが津田青楓、第十一編以降は高野正の絵を木版彩色刷りしている。木版は1-5、9編が伊上凡骨、6-8、10-13編は大蔵半兵衛である。時には金箔・金粉を使用し、青貝の象嵌まで試みた(失敗のため中止)ほどとても凝った美しい本である。また、希望者には肉筆で月日と三重吉の署名を書き入れている。この全作集は、三重吉が作品の集大成として精魂を傾けたものである。津田青楓著『寅彦と三重吉』1947(昭和22)年には、全作集の装丁をしていた時期を中心に、三重吉からの手紙53通(1912(明治45)年4月19日から1916(大正5)年7月30日)とそれにまつわる津田の回想が収められている。これらの書簡は『鈴木三重吉全集』別巻にも収録されている。三重吉の全作集への思い入れや気質等がみて取れる。