資料名『小猫』の加筆原稿
著者名鈴木三重吉
出版者
作成年1910(明治43)年

解題

『小猫』は鈴木三重吉が成田中学校(現成田高等学校)勤務中の1909(明治42)年に筆を執った作品で、『ホトトギス』1910(明治43)年1月に掲載された中編小説。これは春陽堂版『返らぬ日』1912(明治45)年所収『小猫』を、『三重吉全作集』第三巻 小猫 1915(大正4)年6月に収録するために加筆したものと考えられる。推敲加筆の箇所は夥しく、三重吉の執拗な推敲癖を窺わせる。内容は、村から出奔した小作農の娘「お岸」の絶望的な帰郷から、父、母、祖母、聾唖者の嫂たちのどん底の生活、過去に関係した薄情無責任な男たち、腹の子を自分で堕そうとして死ぬ「お岸」、までを描いた暗澹たる物語である。初期の浪漫趣味からやや離れて日露戦争後の自然主義文学の影響を受けた作とも見られる。末尾近く、「お岸」が昏倒しながら纏わりつく小猫を投げつける場面の頁は、判読し難いほど朱が入れられているが、加筆は筋を変更するものではなく、表現を過不足なく磨き上げるための推敲に限られているようだ。

(星野光徳)

NSIN(書誌ID)DL20131000050
種別加筆原稿
細目1枚物 
ページ数1枚
大きさ(縦×横)18.6×12.6cm
資料群名鈴木珊吉氏寄贈の鈴木三重吉資料
目録番号5
撮影年月日2012/09/12
掲載枚数 66 枚
備考春陽堂版『返らぬ日』(1910(明治43)年1月刊)に加筆
所蔵成田市立図書館
分類913.6
件名鈴木三重吉
件名(成田)成田市-鈴木三重吉
キーワード(成田)
地域コード9N
郷土分類866