解題
富里市根木名を水源とする根木名川(ねこながわ)は、成田市域内を屈曲しつつ北流し、荒海川や尾羽根川などの支流を集めて利根川へ注いでいる。根木名川の周囲は丘陵地によって袋地となっているため滑川圦樋または新川圦樋を通して利根川に排水するほかない。したがって利根川の水位が上昇し圦樋が閉扉されると、はけ口を失った根木名川の沿岸は浸水氾濫が繰り返し発生した。1932(昭和7)年にようやく本格的な改修がおこなわれたが、軟弱な地盤なため堤防の各所が自然に沈下する有様であった。その後、1935(昭和10)年から1941(昭和16)年にかけて河川全体の堤防の整備、利根川への排水能力増強が図られた。しかし工事進行中に発生した1938(昭和13)年および1941(昭和16)年の大水害は沿岸住民に深刻な影響をもたらした。この年の大水害は7月22日に関東地方に上陸した台風によるものであるが、台風到来前の7月14日には長雨のため根木名川は堤防が4箇所決壊し付近一帯は浸水した。写真は台風通過後に撮影されたものと思われる。黄-3-50は根木名川を挟んだ対岸の旧豊住村安西地区の被害状況を撮影したものである。
(矢嶋毅之 事務局にて一部編集)