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最終更新日2008/05/15

講師 海堂 尊 氏 (医師・作家)

開催日:2007(平成19)年10月20日(土)

 今回の文学講座は,現役の医師であり,かつ作家でもある海堂尊氏を講師に招き,「医学と文学のはざまで」と題してお話いただいた。海堂氏は,第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した『チーム・バチスタの栄光』(宝島社刊)で平成18年に文壇デビューされ,それ以降も意欲的に新作を発表されており,当館でも多くの利用者の支持を得ている作家である。それと同時に,当初は外科医,現在は病理医として多忙な毎日を送られている。

 当日は,医師であるかたわら,小説を書き始めたきっかけを始めとし,『チーム・バチスタの栄光』が出来上がるまでの過程をエピソードを交えて語られた。海堂氏が医療の現場で感じていた疑問や矛盾を広く社会に訴えるのに,小説という手法を通して表現しようと思い至ったことから,実際に小説がベストセラーとなり,当初の思いの幾ばくかが達せられるまでの過程は,興味深いものがあった。『バチスタ』では手術室内の殺人のトリックがまずひらめき,前半部分を一気に書き上げたこと。そこで,はたと筆が止まり,休暇で訪れたスキー場で,後半の白鳥捜査官が登場し物語が展開していくのを思いついたこと,帰路の新幹線の車内で原稿を書かれたことなど,作者としての“産みの苦しみ”を紹介された。

 さて『バチスタ』では,エーアイ(Ai)=オートプシー・イメージング(死体の画像診断)が殺人事件の謎を解く鍵になっているのだが,海堂氏は医師として,以前から死因解明の手段としてエーアイの有用性を説かれている。一般には,まだ馴染みが薄いエーアイであるが,先生は医師の立場でエーアイの専門書を上梓され,さらには一般向け,さらに平易で廉価な解説書も出されている。そして小説として世に出た一連の作品が,エーアイについて理解されるきっかけになれば,という思いを熱く話された。さらに話は医療の現場の身を削るかのような忙しさと人手不足の問題,そしてそれを許している医療行政の貧困さにまで及んだ。その問題点を象徴している発言が『バチスタ』で犯人となった男が最後に呟いた「これじゃあ,医者も壊れるぜ」いうセリフであると言われたのがたいへん印象的であった。

主な著作

 *『チーム・バチスタの栄光』 宝島社 2006年

 *『ナイチンゲールの沈黙』 宝島社 2006年

 *『螺鈿迷宮』 角川書店 2006年

 *『ジェネラル・ルージュの凱旋』 宝島社 2007年

 *『ブラックペアン1988』 講談社 2007年

所蔵一覧

  海堂尊 氏の著作で成田市立図書館所蔵一覧

海堂 尊さんをネットで探す

 *海堂尊のホームページ(宝島社)

 *海堂尊-Wikipedia-