講師 山本 一力氏 (作家)
開催日:2006(平成18)年10月21日(土)
このたびの文学講座は,小説家の山本一力氏をお招きして開催されました。山本先生は,高知県ご出身で,14歳で上京後,新聞配達をしながら高校に通われました。卒業後は,旅行会社や商社勤務,広告制作会社経営等を経て,46歳で文筆活動に入り平成9年には『蒼龍』で第77回オール読物新人賞を受賞。平成14年には『あかね空』で第126回直木賞を受賞され,江戸時代の長屋に暮らす人々を描いた時代小説を多数発表されています。
20歳の時に,初めて旅行会社の添乗員として奥入瀬渓谷の旅をされた体験や,直木賞受賞後に選考委員長より受けた忠告,そして徳川家康による参勤交代制度や江戸の長屋の暮らしなど,とても興味深いお話をしていただきました。
年長者が社会に果たす役割の大切さ
江戸時代は,年長者が次代を担う若者に,生活の知恵や生き方,物の道理や技術などをきちん伝えていた社会でした。社会そのものが大変成熟した大人の社会であったのです。
人は「つまみ食いをして人生を生きていけない」ということです。
おいしいことだけを自分のものにし,背負う義務を果たすのは嫌だという生き方をしていたら,必ず落とし穴に落ちてしまいます。江戸時代の社会のように大人が,年長者から受け継いできたことを子どもに伝えるという義務を果たしていけば,日本は,素晴らしい社会になると山本氏は確信をもって語られました。