解題
写真は利根川を下流に向かって航行する高瀬船の様子であるが、3人の船頭が荷物の上に立っていて、後尾に小舟のようなものが写っているので停泊し荷物の点検をしているのであろうか、それとも荷を下ろす準備に入るところだろうか。高瀬船は荷物を運ぶ船である。森鴎外の小説『高瀬舟』はそれほど大きくない京都の高瀬川を走っていた数メートルの小型のものだが、利根川を往来していた高瀬船(利根川高瀬船)は、大型のものになると長さ25mに及ぶものもあった。船頭4・5人が寝泊まりできる部屋(舳先近くにあり「せいじ」とよばれる)がある大きな帆をもつ貨物船だった。明治以降、風がない時は蒸気船に曳かれて走った船もあったということである。荷物は時代によって違うが、米、塩、酒、酒空樽、醤油、醤油空樽、薪、小間物、材木、干鰯(ほしか<肥料>)、石、瓦、竹などで、米や酒、醤油、薪、竹など地元産のものを東京方面へ、日用雑貨や塩、砂糖、肥料等を地元へ運んでいた。写真の水位計の場所は特定できないが、滑川河岸付近の河川敷にあったのではないかと推定される。写真の水位計は目視で直接、水位を読むものである。現在、利根川下流域で目視の水位計があるのは利根川大橋の橋脚際で、河川敷には建っていない。
(島田七夫 事務局にて一部編集)